其ノ十一 閣下
ガタロウこと初代漫☆画太郎は、幾多の困難を乗り越えて山田太郎と会うことに成功し、「珍遊記」漫画化とそれに伴う印税の振り分けについての交渉を終えた。
カンダーラに向かう二叉路で、山田太郎&玄じょうに別れを告げるガタロウ。
そこでガタロウは、太郎の怒りの張り手を食らう。
太郎はガタロウの「珍遊記」連載計画の問題点を指摘する。
ガタロウの予知夢をもとにした「珍遊記」は、この朝の町を出る場面までしかカバーできていない。時間にしてわずか4日間(3泊4日)の出来事である。
4日間の出来事をネタにした「珍遊記」では、どんなに連載を伸ばしても1年がせいぜい、単行本に換算すれば6巻に相当、全巻70万部売れたとしても印税は「せいぜい」1億6800万円……と、やたら具体的な指摘を行なう山田太郎。
しかもその印税は、ガタロウ・山田太郎・玄じょう・馬で4等分しなければならないのだ。
予知夢以降の展開はオリジナルストーリーにすればどうかと提案するガタロウ。しかし太郎は、「お前にはオリジナルを作る才能はない」とバッサリ言い切る。太郎くらいになるとそういうことまで分かっちゃうのだという。
そんなわけでガタロウは、予知夢以降を補完する「珍遊記」新規ストーリーを自ら実録するため、山田太郎&玄じょうとともに天竺へ向かうことになった。
出発した3人は、奇妙な風体をした一団とすれ違う。

※「樹海少年ZOO1」の秘密結社マッキ一味だ!
「(「珍遊記」漫画内で)いつか何かのバカ役で使える」ということで、山田太郎の指示でマッキ一味をスケッチするガタロウ。
ガタロウのスケッチが終わるまでの間、太郎はマッキ一味に話しかけて足留めを行なう。
幹部・オニの話によると、マッキ一味もまた、山田太郎の首を狙いにきた賞金稼ぎなのだという。
太郎は、賞金首『山田太郎』が昨日退治されたことを告げるが、マッキ一味はそれを無視して町へと歩き出す。
まだガタロウのスケッチが終わっていない。太郎は慌ててマッキ一味の首領・槙原ひろみの服を掴み、転倒させる。
太郎による不意打ちを受け、マッキ一味のオニとオカマが反撃に出る。
また揉め事が起こっていることに気付いた玄じょうが、「仏仏仏……」で太郎を制する。
このため太郎は、オニ・オカマから一方的な攻撃を受けることになった。

※ウスラにしか見えないけど、攻撃されているのは太郎だ!
太郎を制裁したマッキ一味は町へ向かっていく。
太郎の犠牲により、ガタロウのスケッチは無事に終了していた。
町へ入ったマッキ一味は、山田太郎に関する情報収集のため、そして乾杯のため、まり男の酒場へ向かう。
酒場にて、山田太郎が昨日退治されたことを知るマッキ一味。
乾杯はおあずけであった。

(つづく)
今回のポイントを見ていきましょう。
天竺とカンダーラ
山田太郎&玄じょうの目的地である天竺と、ガタロウの目的地であるカンダーラ。同一の場所を示すものだと思っていたのですが、実際には違う場所のようです。
太郎によるとても具体的な漫画連載の説明により、山田太郎&玄じょうの旅にガタロウが加わることが完全に確定しました。
秘密結社マッキ
今回の見所は、なんといっても「樹海少年ZOO1」の悪の組織であるマッキ一味の登場でしょう。
なぜこのタイミングでマッキなのか考えてみたのですが、今回が第「じゅういち」話であることにかけたのでしょう。
マッキ一味の登場は、「珍遊記2」作劇における大きな賭けだと思います。「樹海少年ZOO1」はコアな画太郎ファンならば当然知っている作品ですが、「珍遊記」「まんゆうき」くらいまでしか抑えていないライトな画太郎ファンには知られていません。また、現在「ZOO1」は書店でほとんど流通していません(アマゾンでは買えます)。「ZOO1」は画太郎作品の中でも敷居の高いもののひとつと言えます。
マッキで「乾杯」というのは、画太郎先生が「ZOO1」作中で行った暴挙―第32話「酒池肉林」―を知っていればこそ、大笑いできるネタなのです。

乾杯地獄(「樹海少年ZOO1」第32話より)
今後、マッキのネタに読者がついていけるのか不安です。
総括
物語にマッキ一味が加わり、いよいよ混沌としてきました。
山田太郎とオニの掛け合いなど、コアな画太郎ファンの頬を緩ませる展開だったと思います。
そしてやはり、娘々の再登場はしばらくおあずけの様子。
其ノ十二 孔明様
山田太郎の首を討ち取るため、はるばる秋田からやってきたマッキ一味。
一日遅れで山田太郎が退治されてしまったことを知り、悲嘆にくれる。
ここでオカマの提案により、山田太郎を討ち取った賞金稼ぎを探すことに目的を変更する。その賞金稼ぎを襲い、賞金一億円を強奪しようという算段である。
マッキ一味は、酒屋近くの警察署に向かい、情報収集を試みる。
コックリの秘技「口臭鼻つぶし」で警察署長を催眠状態にし、質問を行なう。
署長によると、サルそっくりの子供が倉庫から無理矢理一億円を持っていってしまったのだという。
ここに至り、マッキ一味は、町の外で出会ったエテ公(本当は山田太郎)が賞金首「山田太郎(本当はヒババゴン)」を討ち取った事実を理解した。
すぐさま太郎の追撃にうつるマッキ一味。来た道を戻り、再び町の外へ出て行った。
そのすぐ後、警察署の前に役人風の男がテレポートしてくる。片目は腫れ、頭には包帯を巻き、ごく最近怪我を負ったような風体。また、手には「山田太郎死す」を告げる新聞を握っている。

役人風の男は、警察署前の公園で晒されている「山田太郎」の巨大な首を確認に行き、それが「山田太郎」ではないと見抜く。
公園に集まっていたギャラリーの中、町長が役人風の男に気付く。役人風の男は、「「食」の国の天才陰陽軍師・安倍孔明」であるという。
ギャラリー達は一同にひざまずき、孔明と町長の会話が続く。二人の会話には、この物語の世界観に関する多くの情報が含まれている。
・この物語の舞台である「食」の国は、3年前まで「怪」の国であった。3年前の政権交代まで、民衆は「怪」悪政に苦しんでいた。
・「怪」の国の中枢は、武田という勢力であった。
・政権が「食」に代わり、国内は平和になった。ただし、いまだ「怪」の残党勢力が存在している。
町長との話の後、孔明は再びテレポートし、警察署内へ移動する。
警察署長は、いまだコックリによる催眠が解けていなかった。
孔明が署長に質問を行なう。正式な手続きを経ず、偽の山田太郎の首に対し賞金を与えたことが問題であるという。
しかし署長によると、賞金はエテ公により無理やり持っていかれたのだという。
事態が混乱していることを感じた孔明は、術を用いて警察署長の記憶を直接視る。
署長の記憶より、孔明は、懸賞金を持っていたエテ公が山田太郎本人であることを看破する。
また、太郎が仏具・緊箍児(きんこじ=“金のヘアバンド”)を付けていることから、現在の山田太郎が僧侶に妖気を吸い取られた状態であると理解する。
山田太郎が僧侶に改心されたのならば、なぜ懸賞金を騙し取るような悪事を働いているのか?完全に改心する前に僧侶を殺害して逃亡したのではないか、と孔明は推測する。それならば、山田太郎はいずれまた妖気が戻り、元の巨漢に戻って暴れだすのではないか?今のうちの山田太郎を捕獲しなければいけない。
ここで警察署長の催眠が覚める。
孔明は署長に対し、山田太郎捜索を指示。
捜索に際して、3枚の札を署長に与える。犬、伝書鳩、ゴーレムの札である。いずれも札に描かれた絵から使い魔が実体化するという。
犬はマッキ一味(=変なおじさん達)の匂いを追跡するのに用いる。マッキ一味を尾行すれば、山田太郎の居所も突き止めることが出来るであろうという算段である。
山田太郎を発見したら、伝書鳩の使い魔の札を用いること。これで孔明と連絡を取ることが出来る。
また、やむを得ず戦いに巻き込まれた場合、ゴーレムの札を用いること。地中から岩の巨人が現れ、主を守るという。

これらを孔明から受け取り、警察署長はマッキ一味および山田太郎の捜索に出かけていった。
(つづく)
今回のポイントを見ていきましょう。
「食」の国、軍師孔明
まさかの孔明登場により、物語の世界観がかなり具体的に語られました。
孔明と言うと、珍遊記の第1話のまさに1ページ目で麻雀に興じていた人物なのですが、出番はその1ページしかなく、はっきり言って端キャラクターという認識しかありませんでした。

孔明(「珍遊記」第1話より)
珍遊記をよく読んでみると確かに、太郎と孔明が交戦したということが太郎自身の口から語られています。

(「珍遊記」第1話より)
しかしながら、こんな端キャラクターを画太郎先生が引っ張り出してきたことは非常に驚きでした。
「怪」の国、武田
「怪」の国が3年前に政権交代して成立したのが「食」の国であると語られます。
また、「怪」の国の中枢は、武田であったといいます。
これはもちろん、「甲斐の武田家」のパロディなのですが、
「珍遊記2」での思いつきの設定ではなく、「珍遊記」にも(回想として)確かに武田軍が登場します。

武田軍(「珍遊記」第1話より)
また、いまだに「怪」の武田の残党が存在していることが、町長の口から語られました。
ここで「まんゆうき」ゴッドベイダー編に目を移すと、秘密結社ゴッドベイダーの私兵の中に「武田」のノボリを持った兵が居るのが確認できます。
この兵こそ、武田の残党なのかもしれません。

武田の残党?(「まんゆうき」ゴッドベイダーその8より)
はるばる秋田から
マッキ一味は「秋田から海を渡ってやって来た」。
これは言わずもがなのダブルミーニングですね。
「食」の国が中国大陸を想定しているのに対し、マッキ一味の出自は遠く離れた日本の秋田であるという描写。
それからもうひとつは、秋田書店から出版社の垣根を越えて集英社にやって来たという意味です。

総括
マッキ一味が一話限りのサービス出演でなく、今後のストーリーにも関わっていくというのは予想外でした。
それに陰陽軍師・安倍孔明まで加わって。一体どうなるんだ。
個人的には“「怪」の武田の残党”がキーになると思います。そして、 武田→武田鉄也→金八先生→珍八先生 という連想はほとんど約束事のようなものであり、今後の展開で珍八先生が登場する可能性は非常に高いと考えられます。娘々が先か、珍八っつぁんが先か、そういうレベルの話です。

珍八先生(「地獄甲子園」第八獄より)
また、ザーマスはまだ警察署内に拘留されていますが、署長の留守の隙に脱獄すると予想されます。ザーマスは3万円の賞金首になってしまうわけですが、脱獄後は武田の残党に身を寄せるとか、そんなストーリーも考えられますね。
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